2022/03/19
2024/01/14
SPECIALIZEDのサドル「S-WORKS POWER WITH MIRROR SADDLE」をレビュー
「サドル沼」を脱出できる製品として、初心者から上級者まで幅広く利用されているSPECIALIZEDのPOWERサドル。
そんなPOWERサドルの3Dプリンターモデルである「S-WORKS POWER WITH MIRROR SADDLE」(以下MIRRORサドル)を購入して約1年が経過しました。購入した背景や、使ってみて感じたことを紹介します。
目次
ロードバイク初心者とサドル沼
ロードバイクを始めて間もないころは、全体重をサドルに乗せてしまいがちでお尻を痛めてしまうという経験をする方が多いと思います。私もその1人で、ロードバイクを始めて1か月でサドルを購入しました。
ここで陥りやすいのがいわゆる「サドル沼」で、購入したサドルが自分には合わずまた次のサドルに交換する、、、という無限ループにハマってしまう方が少なからずいます。安いサドルを購入したのに結果的に高くついてしまうといったことになりがちです。
今回紹介するMIRRORサドルは、そんなサドル沼を一発で脱出できる可能性が高いサドルです。
自分のサドル遍歴
私の場合はそこまでサドル沼にはハマっておらず、以下のような遍歴です。
- Bontrager Verse Comp Bike Saddle
- SPECIALIZED POWER EXPERT SADDLE
- SPECIALIZED S-WORKS POWER WITH MIRROR SADDLE
最初のサドルはÉmonda SL 5 完成車に付属してきたものです。いまいち自分に合っていない感じがしたのと、SPECIALIZEDのサドルが評判が良いということですぐに交換することにしました。
次に交換したのは、POWERサドルのラインナップの中でエントリーモデルに位置づけられるPOWER EXPERTサドルです。特に初心者の間で利用者が多い人気の製品です。
半年ほど使用し、これといって不満は感じませんでしたが、MIRRORサドルのほうがわずかに軽量であることと、MIRRORサドルの座り心地を試してみたくて交換してしまいました。
その後MIRRORサドルに交換し、現在に至ります。
写真でチェック
MIRRORサドルの特長を写真を見ながら確認していきます。
3Dプリンターによるハニカム構造
最大の特徴はこのハニカム構造です。「合わせ鏡のようにライダーのお尻の形状を完璧に再現する」という特徴からMIRRORの名前が付いたようです。
一般的なサドルは内部に詰められたクッション材によってお尻をサポートしますが、MIRRORサドルではクッション材の代わりにこのハニカム構造がお尻をサポートします。
場所によってサドルの固さが異なる
ハニカム構造によって、サドルの固さが場所ごとに微妙に異なる作りになっており、それが通常のサドルにはないフィット感を実現しています。店頭などで実際に製品を触ってみるとわかりやすいです。
例えば座骨が当たる部分は固めですが、サドル先端部分は柔らかくなっています。身体のデリケートな部分の圧迫感が少なくなるように設計されているので、長距離のライドでも安心です。
SWATマウント対応
サドルの裏側には、SPECIALIZED独自規格であるSWATマウントに対応するためのねじ切りがあります。これを利用すると、ボトルやサドルバックをスマートに取付することができます。
使ってみて良かった点
この製品に交換してから約5000kmほど走っています。実際に使ってみてよかった点を記載します。
フィット感が抜群
ハニカム構造のおかげで、POWER EXPERTサドルと比較してさらにフィット感は向上しています。お尻の周りをサドルが包み込んでくれるような感覚があります。
ちょっとした距離を走るくらいなら、普段着のままでもお尻が痛くならないくらいに衝撃を吸収してくれます。
滑りにくい
POWER EXPERTサドルは表面がやや滑りやすく、乗車姿勢が安定しないと感じるときがありました。MIRRORサドルは表面がやや滑りにくくなっており、走っていてお尻の位置がずれてしまうことが少なくなったと感じます。
気になる点
価格が高い
サドルで55,000円という価格はかなり高めなので、購入をためらう方は多いと思います。
ただ、安いサドルをいくつか購入して結局どれも自分には合わなかった、となるよりはMIRRORサドルを1つ購入するほうが結果的に安上がりになる可能性はあります。
POWER EXPERTサドルから劇的な変化はない
MIRRORサドルはPOWER EXPERTサドルと比較すると3万円以上高い製品です。使用感が向上したのは間違いないですが、そこに3万円以上を費やす価値があったかというと微妙なところです。
資金に余力がある方には間違いなくMIRRORサドルをおすすめしますが、他にも購入したいパーツがある方などはPOWER EXPERTサドルで十分満足できるかもしれません。
注意が必要な点
購入を検討している方に向けて、注意しておいた良い点がいくつかあるので記載しておきます。
アルミレール用のヤグラでは使用できない
※MIRRORサドルに限った話ではありません
初心者があまり知らないこととして、シートポストにはヤグラと呼ばれる部位があります。ヤグラにサドルのレールを挟み込むことでロードバイクにサドルを装着するわけですが、ここで注意が必要なのがサドルのレールの材質です。
サドルのレールにはアルミとカーボンの2種類があり、以下のような特徴があります。MIRRORサドルはカーボンレールです。
材質 | 重量 | レール径 |
---|---|---|
アルミ | 重い | 新円(7mm) |
カーボン | 軽い | 楕円(7x9mm など) |
ポイントは材質によってレールの径が異なるという点です。
私が乗っている Émonda SL5 の完成車には、以下のようなヤグラが付属しています。
ヤグラの表面に「7 RND」と記載がありますが、これはこのヤグラが「7mmの新円レールにのみ対応している」という意味です。つまりこのヤグラのままでは、MIRRORサドルのようなカーボンレールのサドルを取り付けることができません。
MIRRORサドルの注意書きにも以下のような記載があります。
■注意:オーバーサイズの7x9mmカーボンレールのみ適合。7mmラウンドレール用サイドクランプを採用するシートポストには取り付けできません。
-----
以下ページより抜粋
https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g27120-8505/
ではどうすればいいかというと、カーボンレールに対応しているヤグラに交換する必要があります。TREKのロードバイクの場合、カーボンレールに対応したレールが純正品として販売されているので、それに交換することになります。
以下は私のロードバイクに装着しているヤグラで、TREKの店舗で購入したものです。表記は「7x10」となっていますが問題なく使用可能です。
なお、ロードバイクのメーカーによってはやぐらがアルミとカーボンの両方に対応するものもあります。お使いのやぐらがどうなのかを事前に調べておいたほうがいいです。
POWERサドルの中で最軽量のモデルではない
POWERサドルには以下のラインナップがあります。座面が湾曲している「POWER ARC」というモデルもありますが、ここでは通常のPOWERサドルのみ取り上げます。
※以下に記載の重量は143mmのものです
製品名 | 重量 | 価格 |
---|---|---|
S-WORKS POWER | 190g | 55,000円 |
S-WORKS POWER | 159g | 39,600円 |
POWER EXPERT SADDLE | 233g | 19,800円 |
上の表のとおり、MIRRORサドルは重量だけ見れば「S-WORKS POWER CARBON SADDLE」に劣っていることがわかります。徹底的に軽量化をしたいという方には選択肢から外れる可能性があります。
サイズが2種類ある
MIRRORサドルには、143mmと155mmという2つのラインナップがあります。座骨幅によってどちらを選ぶかが変わりますがこれは人によってさまざまで、身長と体重が同じ人であっても最適なサイズは変わる可能性があります。
SPECIALIZEDの直営店であれば適切なサイズを無料で診断してくれるサービスが受けられるので、可能であれば直営店で購入することをおすすめします。私も直営店でサイズを測り、143mmを購入しています。
まとめ
良い製品であることに間違いないですが、やはり価格が気になるところです。重量を気にしないのであれば、まずはPOWER EXPERTサドルから試してみるのが良いのではないかと思います。また、体重をサドルではなく主にペダルに乗せるように意識することで、サドルを交換せずともお尻の痛みは改善できる可能性があります。
それでもダメなら、この製品がサドル沼に悩める人々の救世主となるはずです。